◎高齢者施設へアートデリバリー
活動および実施期間:1999年〜
主催:NPO法人芸術資源開発機構ARDA(東京)
http://www.arda.jp/
【どんな社会的課題に対して】
・高齢者がいきいきと、自分らしく生きられる
2016年の日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳で、いずれも過去最高を更新。前年に比べ女性が0.15歳、男性は0.23歳延びた※。多くの人が長い高齢期を過ごすことになった今、高齢になって介護が必要な状態になっても、誰もが自分らしく生き生きと暮らしていける社会が求められている。
(※厚生労働省 「平成28年簡易生命表の概況」結果の概要 1 主な年齢の平と均余命)
【アートのどんな手法でアプローチをして】
NPO法人芸術資源開発機構ARDAは、「アートを、生きるチカラにすること」をミッションに掲げ、芸術という資源を開発し、その新しい可能性を社会に活かす事を目的としている。上記の課題に対し、国連が定めた国際高齢者年、1999年から「高齢者施設へアートデリバリー」を開始。これは高齢者施設でのアーティストによる美術、音楽、ダンスなどのアートワークショップを通じて、五感をゆさぶり、日常では見られない、眠っている高齢者の潜在的な能力を引き出す取り組みである。高齢者の方にワークショップを行う前に、介護士を対象に全く同じワークショップ体験講座を行う点も特徴。ワークショップの意義の理解や共有を促すとともに、職員間のコミュニケーションもはかっている。
【どんな結果に至ったか】
普段のレクリエーションや娯楽とは違う体験は高齢者の五感に刺激を与え、日常とは異なる生き生きとした表情や動きが生まれてくる。介護士も共にワークショップを受けることで、介護する人とされる人という関係を超えて1人の人間同士として向き合う貴重な機会となる。また、アーティストと参加者の間に入ってサポートするアート・コミュニケーターがひとり一人をフォローし、笑顔を引き出している。
【どんな問題を乗り越えて】
この活動は、見本があって教える、または鑑賞するような内容ではないのでなかなか理解されにくい。そこで、DVD付き「ハンドブック」と「アートによるケアの可能性に関する調査・報告書」を出版。活動の広がりを期待し、シンポジウムも開催している。急速な高齢化で三大介護(身体介護サービスのうち、食事介助、入浴介助、排泄介助のこと)に追われる現場では、日常的なアクティビティは介護士の努力やボランティアが行うものとなっている。アートの必要性は理解されても財源や手間などを考えると、こうしたアートワークショップの導入は難しいのが現状である。助成金を獲得しながら活動してきたが限界もあり、アートを福祉に活かすこの活動への行政の支援の必要性を感じている。
アート・コミュニケーターのサポートもあり、日常では見られない意外な表現や、生きてきた歴史の片鱗などを発見することも。