◎ノンバーバル・パフォーマンス「ギア-GEAR-」(京都)

活動および実施期間:2012年〜
主催:ART COMPLEX


【どんな社会的課題に対して】

・外国人観光客に対するナイトコンテンツ不足 京都は国内有数の観光地であり、海外からも多くの観光客が訪れる。しかし昼間は寺社仏閣や美術館・博物館などの観光コンテンツが揃っているのに対し、17時以降に日本の文化や芸術に触れることのできるコンテンツがない点が課題とされてきた。

・子どもたちが良質の芸術文化に触れる機会の創出 もうひとつの課題は、子どもたちが舞台芸術にふれる機会が少ないこと。観劇経験の乏しさや、数少ないその機会に面白い作品に出会っていないことが、観劇人口の減少につながってしまう懸念がある。

 

【アートのどんな手法で】

それらの課題に対し、劇場運営やイベント企画などを手掛けるART COMPLEXが企画製作するオリジナル舞台作品「ギア」は、ノンバーバル・パフォーマンスのロングラン公演という答えを提示する。

 

【どうアプローチをして】

ノンバーバルとは非言語という意味。「ギア」はセリフを一切使用せず、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングを取り入れたパフォーマンスや、光や映像を駆使した最新の演出でストーリーを描く。そのため言葉の壁に阻まれることなく、世代や国籍を越えて楽しむことができる。 また一般的な貸しホールでの演劇公演が数日から長くても数週間であるのに対し、ギアは専用劇場を持ち、平日も含め昼夜2回公演を行っている。「良質の演劇公演をいつでも見られる」という環境をつくることで、子どもたちが舞台芸術に触れる機会を増やし、外国人観光客に対する京都のナイトコンテンツ不足の解消も実現している。また関西在住のアーティストやパフォーマーが活躍できる場をつくることで、東京そのほかへの流出を防止にもなっている。

 

【どんな問題を乗り越えて】

ロングラン公演を可能にするクオリティまで高めるために、準備に2年間をかけ、トライアウト公演を行った。公演ごとに観客からのアンケートを取り、内容や演出をブラッシュアップ。観客の7割が面白いと評価するまで作品を練り上げ、約2年間にわたる計5回、91公演にも及ぶトライアウト公演を経て、ロングラン公演を開始した。

 

【どんな結果に至ったか】

「ギア」は2017年10月には公演2000回を超え、日本では異例のロングランを達成している。「日本語がわからなくても楽しめる」と外国人観光客の間で人気が高まり、2014年には京都市内の観光スポットランキング2位まで浮上。2018年には「第2回はなやかKANSAI魅力アップアワード」(近畿経済産業局主催) の関西インバウンド大賞を受賞した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ギア専用劇場は、大阪毎日新聞社京都支局ビルとして1928(昭和3)年に建築されたレトロビルの3階。

 

 

 

 

 

 


(Photo by Kishi Takako)
キャストは国内外で活躍する第一線のアーティスト。それぞれのキャラクターを数名のキャストが日替わりで演じる。