◎ブレーカープロジェクト(大阪市西成区)

活動および実施期間:2003年〜
主催:ブレーカープロジェクト実行委員会
http://breakerproject.net/

大阪市の文化事業として2003年より始動。現在は西成区を拠点に活動する。アーティストが時間をかけて新たな表現活動を生み出す環境をつくっていくこと、その創作プロセスを地域の人々と共有することで、双方にとって有効な創造活動の現場をまちの中に創出していくことを目的とする地域密着型のアートプロジェクト。


【どんな社会的課題に対して】

現代の芸術文化が社会から孤立している状況や、社会が経済的な効率のみを追求し価値観が均一化していくことへの危機感から、「芸術と社会をつないでいく」ことで芸術・文化の裾野の拡大を図ると同時に、それぞれの想像力/創造力を育まれ、多様な価値観を獲得した市民一人ひとりによって持続可能な地域社会が形成されていくことをめざして活動する。

 

【アートのどんな手法でアプローチをして】

アーティストの創作プロセスと地域の人々の関わりをつくりながら、日常のなかに創造の現場を生み出していくという手法。完成した作品をまちに持ち込むのではなく、創造活動のプロセスを共有し、場所(地域)に根ざした作品や活動を生み出している。リサーチをベースにしたフィールドワーク型のプロジェクトや町会や学校、また福祉施設などと連携して取り組むプロジェクトなど、時間をかけてさまざまな関わりを丁寧に生み出していくマネジメントに注力する。また一回限りのイベントではなく、日常における継続した活動に重きを置いている。

 

【どんな問題を乗り越えて】

「よくわらかない」「難しい」と言われることが多い現代の美術でも、同じ地域で継続して活動し、関わりをつくっていくことで、価値観の違いを超えた関係性が生まれている。

 

【どんな結果に至ったか】

活動を継続していくことで、町会、学校、福祉施設など地域とのネットワークが広がり、協力や参加を得られるようになっている。活動を通じて出会った地域の人の中でも主体的に関わってくれる人を「地域コーディネーター」と位置付け協働していていくことで、プロジェクトをさらに地域に浸透させていくことにつながっている。また、活動に参加することが高齢者の「生きがい」につながるなど、2次的効果として福祉的な効果も得られている。
これまでの実践を通して見えてきた活動の成果/効果としては、①これまで現代の芸術に接する機会のほとんどなかった人へのアプローチによって新たな鑑賞者(参加者)の開拓につながっている(文化芸術の裾野の拡大)と同時に、日常の中に表現の場を拡張することができている。②一人ひとりの想像力/創造力を取り戻す。③普段は見過ごされている存在、事象を掘り起こすアーティストによって、地域の再発見(潜在する地域の資源/記憶/課題など)につながっている。④これまで出会うことのなかった人と人がつながるなど、多世代をつなぐ場を創出。⑤展覧会など発表する機械に地域外へ向けた広報も行なっていることで、地域と外をつなぐ役割も果たしている。

 

 

 

 

 

 

 

これまでに発行された3冊のドキュメントブック。2006年〜2015年までの活動が記録されている。

 

 

 

 

 

「新・福寿荘」。アーティストユニット・パラモデルが滞在制作を行い、一室を滞在型作品へと転換させた。