◎みてアート/御幣島芸術祭(大阪市西淀川区)

活動および実施期間:2013年〜
主催:みてアート実行委員会
http://miteart.blogspot.jp/


【どんな社会的課題に対して】

・「公害のまち」から変遷する地域で、まちをリノベーション(再生)していく

高度経済成長期に阪神工業地帯として発展した一方で、公害にも見舞われた西淀川区。現在工場の多くは移転、マンションや一戸建ての建設によって新たな住民が増え、工業地帯からまちの風景は変わりつつある。かつての公害のまちから変遷をたどる地域で、過去の記憶を今につなぐと同時に、これからの未来に向けてまちをリノベーション(再生)していく。

 

【アートのどんな手法でアプローチして】

「西淀川公害訴訟」における企業との和解金の一部を基金に設立された、公益財団法人公害地域再生センター(愛称:あおぞら財団)が事務局となって「環境のまち・ニシヨドガワ(青空をとりもどしたまち)」を掲げ、みんながまちのことを考える機会として「ニシヨドでみんながアートする日」として「みてアート(御幣島芸術祭)」を実行委員会形式で開催している。
JR御幣島駅から歩いて行ける会場で、絵画の展示や音楽ライブ、ワークショップ、パフォーマンス、スタンプラリーなどさまざまなイベントを実施。普段アートとは縁のない商店、事業所、駐車場などまちのさまざまなにスポットを当てていく。また工業団地で使用されているドラム缶を活用するなど、地域のものづくりとも連携。社会の変化とともに変化してきた地域だからこそ、アートの魅力を引き出す場所の力があり、またアートによって新たな場所の魅力が引き出される、そんな相乗効果が期待されている。
治安の悪かったまちが、ストリートアートを増やすプロジェクトをきっかけに変わっていったニューヨークの「ブッシュウィックコレクティブ」を参考にしている。

 

【どんな問題を乗り越えて】

当初は地元商店街は参加に消極的であった。しかし何度か足を運ぶうち、「昔、吉永小百合が映画の撮影で野里に来た」という話から、その作品を上映することに。また商店街で行った雑貨マルシェが盛況だったことから、2回目以降は協力を快諾。地元の淀商業高等学校の学生が関わっていたことも、後押しになった。
実行委員会形式には地域の人も多く参加。西淀川区役所の後援により地域の信頼が得られたほか、区報への掲載や地域の掲示板へのポスター掲出なども可能になった。
地域の中では受け入れられ定着しつつある反面、「アート(芸術)」性をどう高めるかが現在の課題。「西淀川を10年でブッシュウィックに!」という目標を実現するため、2018年度は昨年に続き、アーティストの山田龍太氏によるアート・プロデュースのもと、新たな展開を目指している。

 

【どんな結果に至ったか】

2013年のスタートから年々申込者も参加者も増えている。2017年は4エリアを会場に約30のプログラムが実施され、来場者は2日間で過去最高の約3,000人を達成した。ファミリー層の住民が多く母親同士のネットワークを通じて広まっていることもあり、親子連れの参加が多数を占める。そのため子供たちが参加できる体験型のアート・ワークショップなどが人気。「来年も楽しみ」、「毎年心待ちにしている」などの声も聞かれ、地域のアートイベントとしてしっかり根付いている。

 

 

 

 

 

 

 

工場で使っているドラム缶を活用した「ライブペント ドラム缶アート」は毎年子どもたちに大人気。

 

 

 

 

 

 

 

2017年は「まちを語ろう、歌おう、踊ろう」がテーマ。街のあちこちがアートの会場に。